~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
「人の役に立つことがしたい」「相手のために何かをしたい」と思いませんか?
相手のための行い(利他行 りたぎょう)は、私たちが生きていく上で大切なことだと、お釈迦様も説かれています。お互いが利他行を心がけることによって、人と人とのつながりが強まり、支え合いの社会が生まれます。一人では困難な道のりも、皆で支え合うことによって、一歩が踏み出せるようになります。
しかし、利他行はいつも思い通りの結果が得られるとは限りません。「相手のためを思って言ったのに素直に聞いてもらえずに、誤解を受けてしまう」「相手のために準備をしたのにお礼も言ってもらえない」などの経験はないでしょうか?このようなことが続くと相手のことを考えることに疲れてしまいます。
利他行が思い通りにいかないときには、なぜ相手のための行いがしたいのかを振り返ってみてください。「人の役に立ちたい」「相手のために何かをしたい」という思いの背景の一つに「私は役に立つ人間だ」「私の価値のある存在だ」と思いたいという欲求があります。このような思いを経験することは心の発達においては重要なことになります。自己有用感(じこゆうようかん)ともいわれますが、自信を持つことができ、生きる力につながっていきます。
しかし、自己有用感だけに固執してしまうと、相手からの感謝や評価を過度に求めるようになり、自己満足を得るためだけの利他行、押しつけの利他行になってしまう危険性があります。
利他行はあくまで「相手のため」というのが目的であり、相手の喜ぶ姿を見て、結果的に自分も満足できるというものなのです。道元禅師(どうげんぜんじ)様は自未得度先度他(じみとくどせんどた)の心をおこすことが大切だと説かれています。利他行を行う際には、相手のことが先で自分のことが後です。そして、たとえ自分が望む評価や感謝が得られなくても、相手のためになったのであれば、それで良いのではないでしょうか。
相手のことを思いやる心(慈悲心 じひしん)を忘れずに、利他行を続けてみてください。
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