~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
利他行(りたぎょう 相手のための行い)をすることで、自分を見つめ直すことができます。自分はどのような心で日々を過ごしているのでしょうか?
菩薩(ぼさつ)さまの修行の一つに六波羅蜜(ろくはらみつ)があります。六波羅蜜とは
1.布施(ふせ 分け与える)
2.持戒(じかい 戒を保つ)
3.忍辱(にんにく 耐え忍ぶ)
4.精進(しょうじん 努力する)
5.禅定(ぜんじょう 心の安定)
6.智慧(ちえ 気づき)
の六つの行いをいいます。
布施とは分け与えること、つまり相手のための行い(利他行)のことです。布施は「相手のため」ということが大切で、自己満足の布施や押しつけの布施にならないように気をつけなければいけません。しかし、布施を行っても、いつも自分の思い通りの結果が得られるとは限りません。その時にどのような心が生じるかで自分の心が見えてきます。
例えば一生懸命に布施(利他行)を行ったのに、相手から感謝の言葉ももらえず、誰も自分の努力を認めてくれないと不満を感じる。そして、感謝の言葉を言わない相手に対して怒りを感じる。さらには、お礼も言えないような相手を非常識な人間だと思う。このようなことはありませんか?
仏教では見返り(利益・評価・賞賛・感謝)に執着(しゅうじゃく)する心を貪欲(とんよく)といいます。また怒りの心を瞋恚(しんい)、自分のことだけを考え相手の立場をわかろうとしない心を愚痴(ぐち)といいます。貪欲・瞋恚・愚痴は私たちの心にある根本煩悩(こんぽんぼんのう)と呼ばれます。
六波羅蜜の持戒では、自分の煩悩に気づき、「見返りに執着しない」「相手の言動に怒らない」「相手の立場を認める」ことを心がけ、煩悩によって心が乱されないように常に気をつけます。
そして、たとえ不満や怒りの心が生じても忍辱、つまり耐え忍ぶことを心がけます
菩薩さまは布施(利他行)を行う際に、相手の立場を認め、柔軟な心(柔軟心 にゅうなんしん)で相手とともに歩むことを大切にしました。
利他行を行った際には、自分の心の動きに目を向けてみてください。どのような煩悩が見えてくるでしょうか。自分の煩悩に気づくことができたら、持戒と忍辱を心がけ、菩薩さまのような柔軟な心を目指してみてはいかがでしょうか。
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