~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
相手のための行い(布施 ふせ)を続けていると疲れを感じることはありませんか?
私たちはただ一人で生きているのではなく、多くの縁によって支えられ、生かされている存在です。そのため、相手のための行い(布施)は、私たちが生きていく上で大切なことです。
菩薩(ぼさつ)さまの修行の一つである六波羅蜜(ろくはらみつ)の教えでは、布施を行うために、自分の煩悩(ぼんのう)に気づき、「見返りに執着しない」「相手の言動に怒らない」「相手の立場を認める」ことを心がけ、煩悩によって心が乱されないように常に気をつけています(持戒 じかい)。そして、たとえ不満や怒りの心が生じても耐え忍ぶことを心がけます(忍辱 にんにく)。そして、布施を続けていく努力をすること(精進 しょうじん)が説かれています。
しかし、不満や怒りが生じても耐え忍び、相手に尽くし続けていると、身心ともに疲れてきます。ストレスや疲れによって体調を崩してしまうこともあります。そのため、相手のための行いは、自分の体調にあわせ、無理なく行うことが大切です。
六波羅蜜では「精進」として布施を続ける努力をするとともに、心の平静を保ち、冷静に自分を見つめる「禅定(ぜんじょう)」が説かれています。疲れを感じたら、がんばり過ぎないでください。そして、自分を見つめ直す時間を大切にしてください。
禅定(坐禅 ざぜん)では、調身(ちょうしん)・調息(ちょうそく)・調心(ちょうしん)を心がけます。坐禅の作法通りに手足を組み、姿勢を正すことで身を調えます。そして、ゆっくり息を吐き出し、鼻から息を吸います。その後、口を閉じて鼻でゆっくりと腹式呼吸を繰り返し、呼吸を調えます。「身」と「息」が調うことによって、心拍も安定し、心が落ち着いてきます。そして、心が落ち着くことによって、自分の心の動きがよく見えてきます。
心の動きを観察していると、過去に起きたことに対する怒りや悲しみ、後悔などが思い出されたり、将来に対して不安や恐怖を感じたりしている様子が見えてきます。心が過去や未来のことでいっぱいになってしまうと心が休まりません。変えられない過去や不確かな未来のことはひとまず脇に置いておいて、心を休ませてあげましょう。そして、「今」に心を向けてみてください。
「今」に心を向けると様々な気づきがあります。日々の生活の中に様々な幸せがあることに気づくことができれば、明日もがんばれる気がしませんか。
〒252-0136
神奈川県相模原市緑区上九沢264
TEL 042-762-2947
FAX 042-762-2947