~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
本来、人は誰でも長所もあれば、短所もあります。好きなところと嫌いなところの両面があるのは当然のことなのです。嫌いなところも含めて、ありのままの自分を受け入れること(自己受容)が大切になります。
しかし、自分のことを受け入れるのは容易なことではありません。自分のことを知れば知るほど、嫌いなところが見えてきて、自己嫌悪に陥ります。今の自分の姿は理想とはかけ離れ、自分に自信が持てません。素直に心を開くことができないため、人間関係がうまく築けなくなります。そして、ますます自分のことが嫌いになっていきます。
ありのままの自分を受け入れるためには、できない自分を許すことから始めましょう。人は完璧ではありません。失敗することもあります。できないこともあります。反省すべきことはしっかり反省し、次に活かすことを自分に約束し、できなかった自分を許してあげましょう。
また、他人と比較するのは控えましょう。自分の目標となる人を見つけて、努力することは大切なことです。しかし、その人そのものになることはできません。比べてしまうと目標に至らない自分が見えてしまい、劣等感ばかり感じてしまいます。そのような時は目標に向かって努力している自分を認めてあげましょう。
また、長所と短所は表裏一体のもので、見る方向によって長所とも短所ともとれます。例えば「気が短い」という短所は「頭の回転がはやい」という長所にもなります。「優柔不断」という短所は「物事をいろいろ慎重に考えている」という長所にもなります。
短所ばかりに目を向けるのではなく、長所でもあり短所でもある自分の個性の一つとして見ることも大切になります。
今ここにいる自分以外に自分はいません。たとえ理想的な自分の姿を思い描いても、想像の世界でしかありません。理想的な自分でなかったとしても、今の自分を許し、がんばっている自分を認めてあげましょう。
そして、成長した自分をほめてあげましょう。今の自分を受け入れることができれば、自分らしい生き方ができるようになります。
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