~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
最近、イライラすることが多くなったり、怒りやすくなったりしていませんか?
あなたは何に対して怒っているのでしょうか。私たちは自分の思い通りにならない時、自分自身や相手に対して怒りを感じることがあります。また、自分が大切に守っていることや、当たり前と思っていることに反する言動を見聞きすると、イライラしてくることがあります。
改めて自分が何に怒っているのかふりかえってみてください。怒りは自分を守るための大切な感情です。そのため、怒りの内容を見ると、自分が思い通りにしたいと強く望んでいることや、大切に守っていること、当たり前と思っていることなど、自分の心が再確認できます。そして、怒りをきっかけにさらに自分の心が強くなり、思い通りにならない現実を乗り越える力となります。
しかし、お釈迦(しゃか)さまは「怒りの心(瞋 しん)」は誰の心にもある根本煩悩(こんぽんぼんのう)の一つであり、執着し過ぎると苦しみの原因になると説いています。相手に対する怒りは、自分の思いだけを相手に強く押し付ける行動となります。また、自分の思い通りにならない相手を強制的に排除する行動となります。
しかし、自分の思いのすべてが相手に受け入れられるとは限りません。私の常識と相手の常識が同じとは限らないのです。お互いに自分のことだけを考えて、怒りの感情とともに、相手に自分の思いだけを強く押し付けようとすれば、反発し合い、トラブルとなるのは当然です。
もし、怒りが原因で相手とトラブルになった場合には、自分だけの思いを押し付けていないかを確認してみてください。相手のために怒っていると思っていても、実は自分の都合だけで怒っているかもしれません。
また、お釈迦さまは「この世の怨(うら)みは怨みをもって静まることはありえない。怨みを捨ててこそ静まる。これは永遠の法である。」と説かれています。怒りや怨みに執着し過ぎると苦しみが増すばかりです。場合によっては、怒りを耐え忍び、捨てることも必要になります。
自分の心にある「瞋(怒りの心)」に気づいたら、自分だけの思いに執着し過ぎていないかを確認してみましょう。
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