~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
努力したことや上手にできたことがあったとき、誰かに自慢したいと思うことはありませんか?
自慢したいという心の背景には、誰かに認めてもらいたいという承認欲求があります。自分の努力を認めてもらうことで安心感を得ているのです。また、他人からうらやましがられることで優越感を得て満足したいという思いもあります。
生存競争という視点に立てば、人間でも動物でも、他と比べて自分の方が優れていることを相手に認めさせるという行為は重要なことになります。動物の求愛行動を見ても、様々な方法で相手に自分のことをアピールしています。また、入学試験や就職活動、職場での競争、他社との競争など、社会においても常に他と比較し、他より優れていることを求められています。だからこそ、自慢できることがあるということは重要なことであり、また、認められたり、優越感を得られたりすると安心感や満足感が得られるのです。
しかし、自慢ばかりしている人の話を聞いているとうんざりすることがありませんか?
お釈迦(しゃか)さまは自慢話の背景に「慢(おごり高ぶる心)」という煩悩がはたらきやすいので注意が必要だと説かれています。「慢」は誰の心にもある根本煩悩(こんぽんぼんのう)の一つで、自分の方が相手より上だと思う心のことをいいます。この「慢」に執着し過ぎると、優越感が得たいだけの話になってしまい、聞いている人もうんざりするのです。
さらにお釈迦さまは、自分の方が上だという思いが強くなると、相手を見下した言動をとるようになると説いています。
また、自分と同等の人や、自分より優れている人に対しても、素直に認めることができすに、相手の欠点や悪口を言って相手の評価を下げることで、自分の方が上だということを認めさせるようになること。さらには自分の実力以上のことを言って、自分を認めさせるようになるとも説いています。
たとえ努力したことや、上手にできたことを伝えたいだけだったとしても、「慢」の煩悩が見え隠れしてしまうと、聞いている人が嫌な気持ちになったり、素直に聞けなくなったりしてしまいます。
自慢話がしたくなったら、「自分の方が上だ」という「慢」の煩悩が出てきていないかを確認してみてください。そして、聞いている人の気持ちも考えて話をしましょう。
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