~悩みを抱えている方へ、仏教からのメッセージ~
「こころに向き合う」は大本山永平寺別院『別院だより』に掲載されたものです。(2013年~2020年)
失ってはじめてその大切さに気づかされるということはありませんか?
当たり前のことが当たり前にできる。平凡に見える日常こそ有り難いことだと気づかされます。しかし、いくら後悔しても、過去は変えることができません。失ったものをすべて取り戻すこともできません。だからこそ、日常の有り難さを忘れないようにしなければなりません。
お釈迦(しゃか)さまは、すべては無常(むじょう)であり、多くの縁(えん)が関わり合いながら、変化し続けていると説かれました。永遠に同じであることがないのだから、本来、日常は当たり前のことではないのです。
改めて自分自身の日々の生活を見つめ直すために、坐禅(ざぜん)を行ってみてはいかがでしょうか。
坐禅は心を落ち着かせて、静かに自分を見つめ直すことができます。調身で坐禅の姿勢を調え、調息で呼吸を調えます。調身と調息によって次第に心が調い、心が落ち着いていきます。そして、落ち着いた心で坐禅をしている自分に意識を向け「今ここで坐禅ができていることの有り難さ」を感じてみてください。坐禅は「心静かにただ坐る」だけです。この、ただ坐るということをできることが有り難いのです。
また、お釈迦さまは「すべての物事は互いに関わり合って存在している」という縁起(えんぎ)の法を説かれました。私たちはただ一人で生きているのではなく、多くの縁によって支えられて生かされている存在であるということです。
坐禅も多くの縁によって支えられているからこそできるのであって、ご縁のおかげで坐禅をさせていただいているというのが本来の姿です。坐禅を行う中で、坐禅を支えてくれている多くの縁の温かさを感じてみてください。
無常の世の中では、出会ったものは必ず別れの時がやってきます。後悔しないためにも、坐禅によって今ここに生かされている有り難さに気づき、日常の中で一つひとつの出会いや経験に感謝して、一瞬一瞬を大切に過ごしてください。
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